外付けモニター導入のすすめ
これまで私は、13インチのノートpcの画面と睨みながら、小さい文字で使用をせこせこと作っていた。在宅勤務の時間が延びたことから、ふと、大画面で仕事をするとどうなるんだろうと思い、一念発起し外付けモニターを購入した。
その際、我が家のスペースの狭さ(画面との距離が十分に取れない)や、種類の多すぎる金額帯やスペックに非常に悩み、悩みぬいて一つの答えを出した。
色々と調べている時に、思ったより情報量が少なかったので、この場でまとめていこうと思う。これから外付けモニターを購入する方には参考にしていただきたい
※購入したモニターはこちら
①外付けモニター導入における目的
まずは、外付けモニターを導入する目的を整理する。私の用途としては、officeによる資料作成と、リサーチする際のWebブラウジングがメインである。その場合、一定のサイズ(大きすぎず小さすぎない)、解像度は高くなくてよい、といった要件が抽出できる。
これが動画鑑賞・編集、またプログラミング・データ分析・ゲーミング等を目的とした場合は全然違ってくる。それらが混在してAmazon等にはラインナップされているからこそ、欲しいものに辿り着くのが非常に難しくなっているのだ。
②サイズ選び(持ち運びの有無)
一番難しく、一番重要なのがサイズ選びである。まず簡単な分岐が1つある。それは持ち運びの有無である。持ち運びが必要な場合は、15インチくらいのモバイルモニターが便利である。私自身も使ったことがあるが、出張やクライアント先で非常に重宝する。これらが必要な場合は、あとは解像度を選択するだけなので簡単である。
一方で、在宅勤務を想定したときに、今回欲しいのは据え置き型である。持ち運び用でもサイズが大きければ問題ないが、残念ながらモバイルモニターの主流は15インチ程度なので、今回は対象外である。据え置き型のモニターは、ざっくりと20インチから32インチくらいが主流である。最近はそれ以上に大きいウルトラワイドモニター等があるが、目的は動画編集等であろう。
③サイズ選び(据え置き型でのサイズ選択)
ここまでで、20-32インチの据え置き型のモニターを購入することは決まったが、ここから絞り込むのは非常に難しい。中国・韓国資本の安いモニターは1万円程度から、大画面でハイスペックなhpやDellのモニターは10万くらいまでと金額も幅広い。
ここで一度、自分の作業デスクを確認していただきたい。大きなモニターを奥には、それなりの机の大きさと幅が必要である。大きさは当たり前なので考慮していると思うが、思った以上に大切なのは幅(モニターと自分との距離を取れるか)である。
一般的なデスクはその幅が50cm-70cmくらいであるが、ハッキリ言ってこれは大画面を操作する上では非常に狭い。32インチなど置いた日には、せっかくの画面を首を左右に動かしながら見なければならないだろう。
結論から言うと、机の幅が50㎝であれば20インチまで、60㎝であれば24インチまで、70㎝であれば27/28までのモニターを選ぶのが妥当だと感じる。これは人によって感覚が異なるので一概には言えないが、長時間の作業を考えたときに、画面との距離が近すぎるのは相当疲れると思われる。
④解像度
サイズが決まったら、あとは解像度を選ぶだけである。このサイズレンジにおける解像度は主に3種類あるが、結論を言うとoffice作業であればフルHDで十分である。
もちろん、解像度が高ければ画面はキレイだが、高くし過ぎるとドット数が細かくなるので表示アイコン等も小さくなり使いずらくなる。もちろんディスプレイ側で調整もできるが、使わない機能のために高いお金を払うのは無駄である。
(1)フルHD… 1,920 × 1,080 = 207万画素
(2)WQHD… 2,560 × 1,440 = 368万画素
(3)4K… 3,840 × 2,160 = 833万画素
⑤拡張性・付加機能
最後は若干趣味の話になってくるが、PCとディスプレイをつなぐ端子をチェックしておきたい。一般的にはHDMIで接続するのが主流であろう。HDMIは大半のノートPCやディスプレイに端子があるので、HDMIで接続するのであれば何も考えずに購入しても問題は無い。VGAと違い、音声もoutputされるのでディスプレイにスピーカーがあれば音も外付けモニターで出すことが出来る。
余談だが、個人的にはoffice作業を行う外付けモニターにスピーカーは不要である。もしゲームを行いたいのであれば、スピーカーの有無もチェックしておかないと、音を出してゲームが出来なくなるので注意が必要だ。
HDMIで少し不便なのは、PC側で電源を取るという必要があることだ。ノートPCの画面をHDMIでモニターに移す際、モニターの電源を取るのはもちろんのこと、ノートPCは別で充電しないと稼働を保てない。一方でUSB-c端子が使える場合、ディスプレイ画面投影しながら電源もPCへ供給することができる。これであればケーブルが一本で運用でき、デスク周りが非常にスッキリする。
またもう一点、モニターの角度/高さ/向きをどれだけ変えられるか、という部分にも着目したい。基本的に外付けモニターは画面角度等の調整が出来ないものが多い。使用用途に応じて選べばよいが、少なくとも高さは変えられるものを選んだ方がよい。一般的に、目線の高さがモニターの上端あたりにあるのが疲れない姿勢と言われている。外付けモニターを上から下に眺めるのはとても疲れるので、注意したい。
<辿り着いた先>
最終的に、据え置き24インチ・フルHD・USB-c対応・画面角度/高さ/向き調整可能なものを選ぶと、上記に上げたモニター(3万円程度)しか出てこなかった。個人的には使用していて満足しているが、外付けモニターが1万円で手に入る時代にしては、高くついてしまったという印象である。
モニターの角度/高さ/向きについては、モニターアーム等を使えば調整できるので、調整できないモニターを購入してモニターアームを別途購入する方が安くて便利な場合もある。ただし、VESAという規格に対応している必要があるので、注意したい。
以上、かなりマニアックな話になってしまったが、一つのツールを導入しようとすると、知識が広がっていくので楽しい部分もある。一方で、自分が欲しいものに辿り着くにはそれなりにリテラシーが必要なので、詳しい人に相談する、というのもかなり効率的な手段だと思う。
在宅勤務でも集中力を維持する方法
こんにちは。長いようで短いGWが明け、少しずつ日常の生活に戻りたいところですが、しばらく続きそうな在宅勤務の中で、なかなか仕事のペースが掴めない、という人もいるかと思います。そんな方へ、いくつかお勧めの方法があるので紹介します。
①ポモドーロテクニック
これはよく聞く方法かと思いますが、簡単にに言うと作業時間と休憩時間を細かく切って繰り返すことです。一般的には、25分の作業時間に対して5分の休憩時間を充て、25分+5分を何セットも繰り返すのがよいと言われています。
結論から言うと、これは在宅勤務云々にかかわらず、絶対にやった方がいいと思います。時間は25分でも30分でも何でもいいのですが、自分の集中力が続く時間の単位でタスクを区切っていくことは絶対に必要です。
具体的には、実施する作業を時間単位(30分単位)に区切っていくのですが、これを全く区切らずに作業していった場合、集中力が切れてもずるずると作業を続けなければならず、手を止めるべきタイミングが分かりません。また進捗も可視化されないため、作業が進んでいる達成感も味わえません。
最初は見積もりが合わず、例えば30分×3セットで終わる予定の作業が5セットかかってしまうかもしれませんが、実施していくうちに見積もりの精度が上がっていくので大丈夫です。副次的な効果として、突発作業が発生したときに「この作業は〇セットで終わるな」と一瞬で見積もれるようになれます。この「見積もり力」はコンサルタントとしてもビジネスパーソンとしても非常に強い武器になります。
ポモドーロテクニックについては、詳しく解説しているyoutuberの方がいるので、そちらも参考に見てみてください
自宅作業の生産性が改善!ポモドーロテクニックに3日間取り組んでみた
②作業風景をタイムラプスで撮影
続いて、ポモドーロテクニックと非常に相性がよく、より集中力を維持できる方法を紹介します。こちらは、自分の作業風景(手元)を動画で撮影するというものです。普通の動画ではなく、iPhoneの機能としてあるタイムラプスというものを使います。
タイムラプスは何かというと、1分に数回くらいシャッターを切るカメラのようなもので、30分くらい撮影した動画が、早回しのような形で30秒くらいに仕上がります。
この方法のメリットは以下3点ほどあります
- 撮られているという緊張感
自分に常にカメラが向けられているのですから、積極的にサボろうとは思いませんし、小さな邪魔が入ったくらいでは作業を続けようという意思が勝ちます。加えて、この作業風景を後で見直すことを考えると、真面目に仕事しようという気持ちが高まります。(SNSに作業動画をアップすると、より緊張感を高めますね) - アウトプットが30秒くらいで短い
自分の作業風景を30分動画で撮影しても、誰も見返す人はいないと思いますが、30秒なら見返す気になります。(作業が軽快に見えて結構楽しいです)この気軽さとフィードバックのしやすさが習慣として継続できるポイントだと思います - 音声が入らない
タイムラプスは普通の動画と違って音声が入りません。なので、電話や会議をしていても、家族が話しかけたとしても撮影自体には何の影響もなく続けられます。お子さんがいる家庭では、会議に子供の声が入るのは日常茶飯事だと思いますが、そこを気にしなくていいのはかなりストレスフリーです
必要な機材としては、基本的にはiphoneだけでOKです。あとは、自撮りをするためのスタンドがあればいいのですが、卓上スタンドだと顔や上半身しか映らず手元が写せないので、机に固定できるアームがおススメです。私が使っているやつを貼っておきますが、3000円くらいで買えます。
<工夫次第で快適に!>
スタバを買って会社へ行き、昼にはオシャレなランチを食べ、仕事を頑張った後は好きなお店で乾杯をする、みたいな理想の会社員生活を実現するにはまだ時間がかかりそうな昨今ですが、自宅でも工夫次第で生産性やクリエイティビティを上げることが可能です。トライアンドエラーを繰り返し、快適な作業環境を作り上げていきましょう!
他にも在宅勤務・リモートワーク系の関連記事を書いているのでよろしければどうぞ
ishikitakaidaiary.hatenablog.com
在宅勤務・リモートワーク成功の要諦(2)
前回記事にも書きましたが、リモートワークというのはそれ自体が大きな潮流の変化であると同時に、その波に乗れるかどうか私たちは試されています。そして、適応するにはハード面・ソフト面両方において工夫が必要です。
ishikitakaidaiary.hatenablog.com
今回は、子育て中の家庭を視野に入れた、リモートワークのポイントをシェアしていきたいと思います。子育て中と言っても、専業主婦の妻がいる家庭、共働きで保育園に預けられない環境、祖父母と同居している、など様々ですが、ここでは一旦、「子供の面倒を見てくれる人が自分以外に少なくとも1人いる」シーンを想定しています。つまり、子供の世話を1日中見ながら仕事をしなくていはいけないケースは除きます(私自身、それをやったことがないですし、現実的に成り立たないと思っています)
①家族への貢献
まずは、「仕事優先」というスタンスを押し付けない、というのが一番大切だと思います。「仕事優先」ということを家庭内で主張すると、「家庭を劣後」と言っているようにどうしても聞こえてしまいます。しかし一方で、大人がいつもより1人多く家庭内にいるというのは、本来良いことがいっぱいあるはずです。例えば、短時間片方がが子供の世話をして、もう片方の親が買い物へ行く・私用を済ませる・昼寝をするなど、自由な時間を作れます。在宅勤務で厄介な主張をする人が増えた、と思われる前に、家族に貢献することで、本来あるべきリソースというものをフル活用しましょう。
②集中タイムを作る
家にいると、どうしても家事を手伝ったり、子供が泣いたら抱っこしたりと、細切れの時間しか確保できなくなります。よって、小さいタスクについては効率的にこなせるます。一方で、集中して思考をしたり、一定の時間をかけて品質を上げていく重いタスクがいつまで経っても消化できない状態に陥ります。これはTodoリストの中に毎日出てきて、ずっと消せないので最終的には精神的に辛くなってきます。この解消法としては、毎日1時間くらい「この時間は集中させてほしい」という時間を申請し、集中タイムを設けることです。その時間は一切家事・育児はしない。可能なら、子供を連れて散歩に行ってもらっても良いでしょう。それでも、自分の部屋がなく人の気配や音が気になる人は、以下のツールがめちゃくちゃおすすめです
見た目ヘッドホンですが、機能としてはいわゆる耳栓です。これをつけた瞬間、自分の周りが静寂に包まれます。家族に対しても「今集中している」って分かりやすいですし、何より音がない分だけ目の前の作業に集中できます。私はこれを買うまで、集中系タスクは夜子供が寝た後にやっていたのですが、今は日中でも集中して作業ができるようになりました。
③土日はちゃんと休む
これは言うが安し、なのですが、在宅勤務は土日へのタスクを持ち越し放題なので、油断するといつの間にか曜日感覚がなくなり、毎日同じリズムで仕事をし続けることになります。これはどう考えてもオーバーワークで、せっかく家にいる時間が長いのに、子供や家族との時間を失っていることになります。タスク設計は余裕を持って平日に無理なく終わらせることができるプランにし、土日は仕事のことを考えないようにするのが理想です。実際に私の周りのコンサルタントの仕事量や労働時間は直近とても増えています。意識的に休まないと、簡単に体調を崩してしまいます。
④お金で解決できるものは解決する
突然の在宅勤務比率の上昇ですから、机や椅子に始まる在宅勤務ツールや環境が整っていないのは当たり前です。それらに対し、一過性のものだからとあまり投資しないでいると、これは大変なことになります。まず、事象として一過性とは考えにくいですし、たとえ1ヶ月間だけだとしても、劣悪な環境で働けば体は一瞬で壊れます。広い家を買う・部屋を増やすと言ったことは無理でも、椅子を買う・クッションを買う・お気に入りのコーヒーを毎日飲む、などお金を払えば一定解決できるものはいくらでもあります。ちなみに、コロナ禍になってから私のこれらのツールへの投資金額は10万円以上で、時にはAmazonの箱が1日4箱届きました。もちろん無駄になってしまったものもありますが、買ってよかったものも多くあります。例えば、PCスタンドを使うことで、腰や肩こりの負担を減らしながらタイピングができます。
<難易度が千差万別>
一言でリモートワーク・在宅勤務と言っても、仕事量は仕事の種類や役職によって絶対的に違いますし、労働環境においても、自分の部屋が確保できる人から、子育てと並行しなければいけない人など、仕事量×労働環境の掛け算で、これまで以上に仕事をする上での難易度の格差が出ている状況なのかな、と思っています。そんな中で、これまでのパフォーマンスを出そうという姿勢も大切ですが、論理的に考えるとそれは不可能ですよね。だって今までと条件が違いすぎるので。なので、与えられた条件を再設定した時に、自分の出せる最大価値を再計算して、その上で少しでも価値が上がるように課題を一つ一つ潰していくしかないかなぁと。つまり、比較すべきは過去数年の自分ではなく、昨日や今の自分です。その際に、ある程度お金で解決できるものはすれば良いと思っていますし、そう言った課題を解決していくことを面白がっていければなぁと思っています。
在宅勤務・リモートワーク成功の要諦
皆様、最近腰が痛くないですか?
慣れない在宅勤務が続き、申し訳ばかりのスペースで、安い机と椅子を用意して、小さくなって作業に電話会議に勤しんでいることだと思います。
本来、在宅勤務は通勤のストレスから解放されるものなのですが、「在宅勤務」しかできなくなった瞬間に、その他のストレスが倍増するものだということが身にしみて理解できた気がします。
その際たるものが、運動不足やなれない机と椅子で、腰が痛くなるというものですが、私の場合、いきつけのマッサージ屋さんも休業でジ・エンドといった感じです。
今回は、そんな在宅勤務の環境を少しでも改善できるツールや運用を紹介していきたいと思います。
①iPadは最強
まずは、言わずと知れたiPadです。
会社のPCが使いやすかったのは、「会社」で仕事をしているからです。
自宅に環境が変わったのであれば、会社PCが最適とは言い難いでしょう。そこで活躍するのが、iPadです。
iPadの1番いいところは、なんといっても「ペンが使える」というところです。
クリエイティブ職の方はもちろん、私のようなコンサルティング職であっても、資料のドラフト、部下の資料の赤入れなど、ペンを使うことが最適である仕事は数多くあります。
これまでオフィスでiPadをいじっていると、なんだか遊んでいるように思われる等の懸念があったかもしれませんが、家では関係ありません。
自由に書いて、それを編集できて、PDFにしてシェアできる。この一連の楽しさを知ってしまったら、PCで行う作業は最小限にしようという意識が働くほどです。
また、ZoomやTeamsでWeb会議をする際のサブ端末としても活躍できるので、会議に参加しながらPCを別作業に割り当てることができます。
これはマジで、たとえ10万くらいかかっても一瞬でペイできるツールだと思っています。
②骨伝導スピーカー
Web会議が続くと、イヤホンを使いすぎて耳が痛くなりませんか?そんなときに活躍するのが骨伝導スピーカーです。
いろいろなタイプが出ていますが、とにかく耳がフリーになるので、ストレスがありません。
その分マイク性能などが低いので、本当に大事な会議や自分がメインスピーカーとなる会議では、普通にイヤホンやAirPodsとかのほうがいいです。
ここでまたApple製品ですが、実際AirPodsもかなりいいです。iPhoneにすぐ接続できて、ワイヤレスに家を動き回れるので、Web会議のストレスが半減します。マイクもいい。なので、骨伝導とAirPodsを使い分けるのがオススメです。参考までに、私が購入した骨伝導スピーカーのリンクを貼っておきます。
③家族とのスケジュール共有
私は1日の最初に、家族に自分のスケジュールを共有しています。
というのも、常に家で仕事をしているので、家族からしたら私にいつ話しかけたら良いかわからないからです。
私からしても、集中したいときに雑談されたり、ミーティングの時間に家事をお願いされても対応できません。
なので、朝起きたらまず、ミーティングの時間と作業に集中したい時間を伝えます。
逆に言えば、それ以外の時間は自由に会話ができる状態にし、家族全体がストレスを溜め込まないようにするのが大切です。
やってみるとわかりますが、在宅勤務というのは家族を巻き込んだチーム戦であり、家族の協力なしではいい仕事ができません。
特に子供がいる家庭では多くの障壁があるかと思いますが、そこはまた改めて纏めていこうと思います。
④運動や休憩をスケジュールに組み込む
最後はめちゃくちゃ基本的ですが、TODOを書き出すときに、運動や休憩もスケジュールに組み込み、強制的に体を休めたり・動かすことが重要です。
それをしないと体がどんどん不健康になり、いつのまにか仕事の効率も下がり、負のスパイラルに入っていきます。
またそれをすることで、スケジュール通りに行動ができ、結果的に生活サイクルが安定します。
<在宅勤務がベーシックとなる世界>
今回の騒動の後、オフィスへの出勤文化に戻っていくと思いますが、在宅勤務のハードルが格段と下がり、週2−3回は在宅勤務をする人が多くなると思います。
過去記事にも書いたように、在宅やリモートワークは、「時間を売る」ことから「成果を売る」ことへのシフトチェンジでもあります。
ishikitakaidaiary.hatenablog.com
これまでの一つの評価指標であった「会社にいる時間」を捨て、「どんな成果を出したか」のみが評価される世界で、自身がどんな能力を活用し、どんな仕事をしていくのがよいか、立ち止まって考えるフェーズに来ていると思います。
一つ言えるのは、行動パターンをこれまで通りに貫いていたら、給与や待遇は下がっていく一方だということです。
上記はこれまでAIやRPAなどのテクノロジーによるものだと考えられていましたが、意外なことにもしかしたら在宅勤務やテレワークが先にインパクトを与えるかもしれません。
パスの責任分界点
マネージャー(上司)とスタッフ(部下)は日々のやりとりで、仕事を渡す方と渡される方に分かれます。マネージャーに渡された仕事を、スタッフがやる。この関係はサッカーのパスの出し手と受け手に似ていると思っています。
①事業会社の場合
私が過去に勤めていたような大きな日系企業の場合、パスの出し手(マネージャー)に求められるのは、いかに受け手(スタッフ)が受け取りやすいパスを出すことです。それには、受け手がどういうスキルを持っていて、理解能力がどれほどあるか、ということを出し手が知っている必要があります。受けれないパスを出したり、受け手が感じられないノールックパスを出すことはあまり推奨されず、評価もされにくい文化にあります。
②外資系コンサルの場合
一方で、外資やコンサルといった文化の中では、パスの出し手に求められるのは、純粋にパスの精度です。つまり、そのパスが通った場合に、チームとして有効か、ということです。受け手のことよりも、まず全体としての形勢を逆転するようなキラーパスなのか、ということが重要です。受け手が追いつけない場合は、それは走力が足りないんだから走りこめばいいし、理解できないなら理解できるまで考えればいいのです。
③責任とネクストアクション
パスがうまく通らなかった場合、事業会社もコンサルも会社なので責任はマネージャーが取ることになります。しかし、次のアクションとして、事業会社であれば、「俺のパスが悪かったね、気をつけるよ」となりがちな一方で、コンサルは「取れなかったのが悪い。次はちゃんとやれ」となりがちです。もちろんどの程度のレベルの話をしているかによりますが、全体的な傾向としてはこの通りです。
④エンジョイかガチか
この構図は実際のサッカーやフットサルのチームでもあって、プロの世界ではキラーパスに対して反応できないのは大きなミスですし、草サッカーでいちいち受け手を責めるのは単なる嫌な奴だと思います。そのチームが、つまり会社がどの温度感でやりたいか、にかかっていて、本気でやりたいなら個の力も上げていく必要があるし、キラーパスを出せるタレントを尊重していく必要があります。一番ダサいのは、ガチで世界と戦う、と言いながらディフェンスラインでユルいパス回しをしていることです。
コンサルへの就職は高値掴みか、という話
大学生の就職ランキングの常連となっているコンサルティングファームですが、これらを揶揄するように、過去の銀行の栄枯盛衰に例え、今就職するのは「高値掴み」だと指摘する声があります。これについて、少し考えてみたいと思います。
①大人気だった銀行の今
90年代の就職ランキング※の上位を占めていた都市銀行は、今やメガバンクを除いてすっかり姿を消しています。それは就職ランキングという文脈ではなく、合併や再編を繰り返し、その姿自体が別のものに変わっていった、ということです。細かい話は一旦置いて置いて、これはバブル経済の崩壊と、人口動態の変化による需要と供給のバランスが崩れたことでおおむね説明がつくと思います。
②一方でコンサルティングファームはどうか
コンサルティングファームも、合併や再編を繰り返す業界といっていいでしょう。会計系からスピンアウトしたものもあれば、SIを得意としているベンダー色の強いファーム、得意とする領域も様々で、確かに現代は有象無象のコンサルティングファームで溢れている、といっても過言ではないでしょう。これは90年代の銀行とよく似ている、という指摘は間違っていないと思います。
③なぜコンサルティングファームにバブルが訪れているか
②のように、コンサルがいわばバブル状態になった理由はなんでしょうか。一つは、事業会社(コンサルを発注する会社)の資金が余っていることが言えます。事業会社の既存事業はどこも頭打ちで、売上の伸びは期待できませんが、収益性はそれなりにあるので投資余力はあります。そして、テクノロジーや時代の変化に対応しきれていない企業が多いため、その資金をコンサルティングファームに流し、何か新しいビジネスを始めたり、新しいシステムを作ったりしています。
④なぜコンサルティングファームにバブルが訪れているか(続き)
二つ目は、ハンズオン型の支援に対する需要増加です。働き方改革が背中を押し、プロジェクトをやり抜く力(リソース)が、事業会社の社員だけでは賄えなくなりました。またプロジェクトのスコープ(考えなければいけない範囲)が広がり、プロジェクトメンバーに多様なスキル(テクノロジー/アナリティクス/AIなど)が求められるようになり、それらを事業会社側で揃えるのも困難です。プロジェクトにコミットでき、終わったら解散できるスキルの高いメンバーが必要とされているのです。
<コンサルティングファームは衰退しない>
上記より、1つ目の理由については、事業会社のビジネスの雲行きが怪しくなることで、バブルが崩壊することは十分ありえます。しかし、2つ目の理由は不可逆です。これから人材はますます足りなくなり、一方で必要なスキルは多様化・専門化します。事業会社とコンサルティングファームが一緒にプロジェクトを立ち上げ、実現していく事例はむしろ増えていくでしょう。よって銀行の事例とは背景が異なり、需要の多少の変動はあれど、これからもコンサルティングファームが日本の会社にとって重要な役割を担うことは間違いないと考えています。
助走期間が人を作っていくという話
私が外資系コンサルに転職して1年ほどが経ちました。振り返れば数年経ったくらい長く感じる1年で、感覚としては「充実していた」というよりは「なんとか耐えた」という表現が正しいと思っています。その理由として、いくつか考えられる点を整理していきたいと思います。
①スキルセットの違いに苦しむ
転職して大きく異なるのがビジネスマンとしてのスキルセットでした。前職はいわゆる日系大手企業で、とりわけ日本語でのコミュニケーション能力が重要でした。ドキュメンテーションもそうですが、やはり「話す力」が重要で、各部の主張を整理して会議をファシリテートしたり、癖のある人と仲良く仕事を分け合って仕事ができることで評価をされてきたと思っています。一方でコンサルにジュニアクラスで入ると、「一人で」「スキのない」ドキュメンテーションができることが、呼吸をするかの如く求められます。
②アマゾンの密林で捉えられたときに何を書くか?
その異常とも感じられるドキュメンテーションへのこだわりは、日本語で文章を書くことについて苦手意識のなかった私にとってもかなり堪えました。上司には「アマゾンの密林で捕まって、この一枚の紙を使ってしか助けを求められなかったとする。その時は命がけで書くよな?そうだと思って紙を書け」と言われ、「君は日本語が苦手だね」とさんざん言われ、ひたすらに物事を構造化し、メッセージを書き直し、繰り返していると日付が変わっているような日々を過ごすことになりました。
③その日は必ず来る
夜明けの来ない夜が無いように、いわゆる会社としては「人間以下」となるようなスキル状態がしばらく続き、30年間で得た自尊心がほぼゼロになったころ、少しずつ光が見え始めます。これまで何も思わなかった新聞や本の文章、人が作った資料に違和感を覚え始め、「俺だったらこう書くな」という自分なりの正解がぼんやりと浮かび上がってくるのです。その時、雑多な情報を整理し、ドキュメンテーションをするという、一つの型ができあがりつつありました。もちろん、その成長に対する喜びはすぐに別の試練の苦しみに消されてしまうことになるのですが・・・
④試練は続くよどこまでも
「人の成長」を前提としているコンサルティングファームにおいて、現状維持している人間に価値はありません。一つできるようになったらさらに高いボールが必ず投げられます(逆に試練を超えられない人に、二度とチャンスは訪れなかったりもします)。スポーツテストのシャトルランに似ている感覚で、壁を越えられないひとが徐々に脱落し、走れるやつだけが最後まで残り、どんどんスピードが加速するような環境です。もちろん向き不向きもありますから、シャトルランに向いていないと思ったら立ち止まるもの立派な選択で、私は偶々一年やりましたが、いつ止めるか分かりませんし、それを別に悪いことだとも思っていません。
<キャリアに助走期間は必要か>
少し根性論も入っていますが、仕事で成果を得るために、正しい助走期間は必要だと思っていて、コンサルティングファームはそれを得られる絶好の環境です。昨今、働き方改革の名のもとに、新人や若手社員が修行できる環境は昔ほど多くありません。売れないセールスを繰り返したり、日の目の出ない資料を作り続けたり、会社にとっては無駄である活動を、新人教育という名のもとに行うことができたから、新しいステージに行けた人は少なくないと思います。働き方改革で「修行がいらない世の中」になったのではなく、「修行の有無や修行のメニューが自分で選べる」ようになったのだと認識すべきで、昔と変わらず、というよりはむしろ昔より、助走期間の重要性は増していると思っています。